私の初フルマラソンのタイムは3:03:47でした。
陸上経験者でそれなりにトレーニングも積んだつもりでしたが、しっかりお約束の30キロの壁に阻まれヘロヘロになって歩きながらゴールを目指しました。
不思議と「もうやりたくない」とは思いませんでしたが、できればこのヘロヘロの状態は二度と経験したくないと思いました。私と同じ轍を踏むことにならないように、この記事では初めてフルマラソンに挑戦する時に気を付けて欲しいポイントについて書きたいと思います。
フルマラソンの難易度を正確に把握する
市民ランナーにありがちがなのが、「まず5キロのロードレースから始める→じゃあ距離を倍にして10キロに挑戦→なんとか走れる!→じゃあさらにその倍、ハーフマラソン(21.1キロ)に挑戦してみよう!→意外と走れる!→じゃあ思い切ってさらにその倍、フルに挑戦!」というパターン。この距離倍々ゲームは、(タイムにこだわらなければ)ハーフまではそこまで苦労することなく達成できると思います。しかしこのノリでフルに挑戦してしまうと、私のように30キロの壁の洗礼を受けることになります。これは完全に私の主観的な意見ですが、ハーフは「10キロを二回走る」という認識で概ね問題ありませんが、フルは「ハーフを四回走る」くらいの心構えで臨む必要があります。フルに挑戦する際はまず、その難易度を正確に把握し、過度に楽観的にならないようにしましょう。
自分の実力を正確に把握する
タイムトライアル、レース、距離走などを通じて自分の実力を正確に把握しましょう。VDOTなどの指標を用いて、自分はフルマラソンをこれくらいで走れそうという目安を持っておくと良いと思います。しかし!VDOTなどから予測したタイムを初挑戦のマラソンで走れるとは思わない方が良いです。予測したタイムからさらに5~10%余裕を持って目標タイムやペースを設定しましょう。間違っても予測タイムより速く走ろうなどとは思わないことです。
必ずレース前に試す
これはフルマラソンに限った話ではないですが、フルでは特に重要なポイント。レース当日にはできるだけ新しい要素を排除し、レース当日に使うものは必ず事前に試すようにしましょう。例えばレース当日に新品のシューズを履いたり、それまで飲んだことのないジェルを使ったりというようなことは絶対に避けましょう。レース前夜にカーボローディング・パーティーに出て普段食べないパスタを大量に食べたら翌日は消化不良でレースどころじゃなかった、なんてことにならないようにしましょう。できればレースの三日前くらいから、慣れていないことは極力行わないことをおすすめします。このタイミングではもうどんなに足掻いても実力を底上げできる要素がありません。後は実力通りの力を発揮できるように、じっと力を貯めるのみです。
準備運動はほどほどに
フルマラソンではそこまでスピードを出さないため、動的ストレッチと動き作りのドリルができれば、それ以上の準備運動は必要ないと思います。私は5キロのレースに出る時なんかは準備運動も5キロくらい動いたりしますが、フルマラソンでは無駄な行為です。流石に全く体を動かさないで走り始めるのは良くないと思いますが、普段の練習からそうしていて問題無い人はそれでも構わないです。最初の数キロが準備運動のつもりで、スタートしましょう。
練習プランを期分けし、テーパリングする
初心者の人にありがちなのが、普段の練習が単調であることです。「毎日10キロ走る」という目標を忠実に実行している、それ自体は素晴らしいことですが、マラソントレーニングの視点からみるともうひとひねり欲しいところ。速く走って体に負荷をかける日、遅く走って体を回復させる日、そういった強弱があると人間の身体はそのストレスに適応しようとします。期分けのやり方にはいくつかのメソッドが存在しますが、基本的な考え方はどれも似ています。まずは基礎的なスピードと持久力を鍛え、ボリュームを増やしながらマラソンにより特異的なトレーニングにシフトし、最後の2‐3週間は少しずつボリュームを減らして走力を保ちつつ疲労を抜く。この期分けの仕方だけで記事がいくつもかけてしまうくらい奥が深く、私自身まだまだ勉強することが沢山ありますが、ここでは
ず~っと同じ練習ばっかりやっていてはダメ
レース前はテーパリングする
という事だけ覚えておいてください。
最初の10キロはとにかく落ち着いて
レース序盤はとにかく落ち着きましょう。普段どんなに落ち着きのある人でもスタートの号砲が鳴ると一時的に興奮状態になりやすいです。この時点ではまだ元気いっぱいなので、目標ペースを大幅に上回ったり、人混みがまだバラけないうちに前のランナーを抜かそうと躍起になり、エネルギーを浪費したりします。ここが堪えどころです。脚力を解放したいのをじっと我慢して、脱力することにとにかく集中しましょう。目標ペースより少し遅くても構いません。この段階でジグザグに走りながら人を抜かしていくより、レース終盤でスピードアップする方がよっぽど効率が良いです。
ハーフを過ぎた時の余裕度を確認する
フルを走る時は、ハーフを過ぎたあたりで少し余裕を感じ、「もう半分?」と思うくらいがちょうどいいです。もしハーフを過ぎた時点で「まだ半分...」と全く余裕が無い場合は迷わずスピードを落としましょう。この時点で余裕が無いのに、無理して同じペースで押していってゴールできるほどマラソンは甘くありません。また少し余裕を感じても、スピードを上げるのはまだ早いです。ここでは目標ペースをキープすることを心掛けましょう。
体調に異常を感じたら迷わずスピードを落とす
エネルギー切れ、いわゆるハンガーノックという状態を体験したことはありますか?
私のハンガーノック初体験はマラソンではなくロードバイクでしたが、私の場合は指先、特に小指の指先から痺れを感じるようになり、視界が狭窄します。呼吸がそこまで苦しいわけではないのに、筋肉へのエネルギー供給が足りなくてうまく体が動かないような感覚を覚えます。少しでもこのような兆候を感じたら、迷わずにスピードを落とし、必要なら歩いたり止まったりしながら、糖分が豊富なものを口にしましょう。
この状態になると、まだ症状が軽いうちは無理して数キロは走り続けられるかもしれませんが、遅かれ少なかれ体が言う事を聞かなくなっていきます。これは体がエネルギー源となるグリコーゲンが残り少なくなってきているのを察し、警鐘を鳴らしている状態です。私はこの状態になった時のために、余分にジェルを携帯しています。エイドステーションが近くに無くてもエネルギー補給できるよう、備えておきましょう。
ラストスパートはしなくていい
ラスト数キロ、可能であればペースを上げても良いでしょう。ただし、5キロや10キロでやるような、最後の400メートルを全速力で走るようなラストスパートをかけるのはやめてください。レース終盤ではあなたの身体は想像以上に酷使されていますので、スパートをかけようと拍車をかけた瞬間に一番酷使され弱った部分が攣る可能性が高いです。私の場合は二月に走ったレースでフィニッシュ直前にハムストリングスを攣りましたが、ふくらはぎを攣るランナーもとても多いです。筋肉は一度痙攣してしまうと数日は回復しません。歩いてゴールするのはまだ良いですが、人によっては四つん這いでゴールしたり、最悪の場合ゴール目前でリタイヤすることもあり得ます。初めてのフルマラソンがDNFにならないように、ラストスパートは我慢して余裕の表情でゴールしましょう。
フィニッシュ後に必要なものを用意しておく
フルマラソン後の疲労は筆舌に尽くしがたいものがあります。
レース中になんとか保っていた緊張感が解け、「もう一歩も歩きたくない...でも歩いて帰らないといけない。」という脳内葛藤が始まります。レース環境にもよりますが、もし冬の大会であれば一刻も早く寒さから身を守る必要があります。冬のレースでは大抵の場合、使い捨ての防寒シートが貰えます。それでも足りないという人は、レース前に防寒着を準備して、預ける荷物に入れておきましょう。
飲食料を用意しておくことも大切。レース側が用意してくれているものもありますが、自分の好みのものがあれば準備しておきましょう。私は初マラソンをフラフラでゴールした後、レース側が用意してくれていたインスタントのチキンスープがとんでもなくおいしく感じたのを鮮明に覚えています。寒かった上に、電解質と水分が足りなくなっていたために特においしく感じられたのでしょう。この経験から、私は水筒にお湯を用意して、インスタントのコンソメスープなどを用意しておくことをおすすめします。
ただマラソンの後は胃腸がかなり弱っているので、飲食はゆっくり行ってください。
まとめ
初めてのマラソンはどんなタイムでもそれが自己ベストになり、そこがあなたのマラソン人生スタート地点です。未来の自分に伸びしろを用意してあげると思って、初のフルマラソンは遅めに走りましょう。記録を狙うのは、マラソン大会に慣れてからでも遅くはありません。
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