エイジグレードという指標をご存じでしょうか?
エイジグレードとは世界マスターズ陸上競技連盟が提案した、年齢や性別の差を無くした指標でパフォーマンスを評価する方法です。例えば50歳の男性がロードレース5キロを20:00で走ることは、エイジグレードを使って評価すると、全盛期に17:36で走るのと同等のパフォーマンスとなります。エイジグレード・スコア(Age Grade Score)は73.75%となります。
この記事ではこの方法を使ってボストンマラソンの標準タイムの難易度を比較してみたいと思います。
比較表
エイジグレード・スコアの計算はemlsports.comのものを使用させていただきました。
スコアを計算する方法は割と複雑で、使用されるデータや計算に使われる係数によっても結果が多少変わります。エイジグレード・スコア100%はその年齢の世界記録を表しているため、各年齢の世界記録データが変わるとエイジグレード・スコアも変わっていきます。
比較表を作ってみた結果、このようになりました。
年齢グループの下限と上限でエイジグレード・スコアを出し、他のスコアと比較してより緑色が濃いと難易度が低く、赤に近づくと難易度が高くなります。
エイジグループの上限の方がより難易度が高くなるのは当然ですが、全体を見るとある傾向が明らかに。
男性の場合、歳を重ねるほど難易度が落ちる
男性の場合、歳が上の年齢グループの方が難易度が落ちています。エイジグレードが低いほど難易度が低いとするなら、一番ボストンの標準タイムをクリアしやすい年齢は75歳ということになります。
その代償(?)として、若い頃は難易度が高めです。男性の場合は34歳以下のグループが最も必要なスコアが高いですが、60歳くらいまでは気が抜けなさそうです。
女性の場合、歳を重ねると難易度が上がる
女性の場合、49歳以下のグループは比較的エイジグレード・スコアが低いことが分かります。最もエイジグレード・スコアが低く、標準タイムをクリアしやすいと思われるのは35歳です。
そして歳を重ねるほどにスコアは上昇傾向となり、79歳でピークを迎えます。これは男性も含めて最も高いスコアです。5時間5分って、若い人達から見ると遅いと感じるかもしれませんが、実は大変速いタイムだったわけです。
カットオフタイムによる難易度の変化
ボストンマラソンでは応募数が定員を超えると、「カットオフタイム」というものを適用します。
例えば、1分のカットオフタイムが適用される場合、全グループの標準タイムから1分ずつ引かれ、その新しいタイムを満たせないランナーは足切りされてしまいます。定員オーバーの場合は、ランナーの数が定員内になるようカットオフタイムで調整します。
2024年のボストンマラソンでは5分29秒のカットオフタイムが適用されます。これはこのエイジグレード・スコアの表にどのような影響を与えるのでしょうか?
↓が、カットオフタイムを適用した表です。
カットオフタイムは公平か?
同じカットオフタイムを全ての年齢グループに一様に適用することは一見、公平な措置に思えます。しかし、エイジグレード・スコアで比較してみると、若いグループほど難易度が上がっていることがわかります。男性34歳以下のグループではスコアが2.13%上昇しているのに対し、80歳では性別関係なく1.20%ほどの上昇となっています。
まとめ
エイジグレード・スコアは、100%が世界記録レベル、90% 以上で世界レベル、80% 以上で全国レベル、70% 以上で地域レベル、60% 以上で地方レベルと言われています。
ボストンマラソンの標準タイムをエイジグレード・スコアという視点でみると、地方や地域でトップを争うような選手しか参加できないレースであることが分かります。しかしその難易度は一定ではなく、男性の場合は歳を重ねると難易度が下がるのに対し、女性の場合は歳と共に難易度が上がります。
個人的には、私はこの年齢グループとカットオフタイムという仕組みはもう少し公平にする方法があると感じます。エイジグレードというシステムも完璧ではありませんが、もしかすると標準タイムの代わりとして一つの標準エイジグレードスコアをエントリー条件として設定するレースが出てくるかもしれませんね。
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