1kg減らせば3分縮む?体重との上手な付き合い方

コラム

体重が1キロ減るとフルマラソンのタイムを3分縮められるという話をよく目にしますが、本当でしょうか?

私は毎朝、起床後にトイレに行き、用を済ませた後で計量をするのが日課です。
体重は一日の中でもかなり増減するので、毎日同じ条件で計ることが大切です。

私の場合、中間値から±2キロくらいは簡単に増減します。前日の夕食でしょっぱいものを沢山食べたりすると一気に体重が増えます。体重が重い日は朝練に向かう気持ちが重くなりがちですが、実際に走ると体重の増減とパフォーマンスに相関性は全く感じられません。重い日は遅くなるわけでもなく、軽い日は速くなるわけでもありません。これは単純な物理法則から考えると矛盾している気もします。体重が軽い方が必要な運動エネルギーも少ないはずだからです。

体重が1キロ減るとフルマラソンが3分速くなる、という話の出所は福岡大学の田中教授であるそうですが、恐らく長ーい論文のある一部分の情報が切り取られて拡散されているのだと思います。実際はもっと複雑な計算なのでしょうが、この切り取られた部分だけを解釈すると、「マラソンは体重が軽ければ軽いほど速く走れる」となり、上記の私の個人的な経験則とは異なる内容になります。

統計的に軽いランナーの方が速い傾向がある、つまり体重とフルマラソンのタイムには相関性がある、というのは事実でしょう。しかしこの話を聞いて「じゃあ私も次のマラソン大会までに2キロ痩せれば6分速く走れる!」と考えるのは少し違う気がします。軽いランナーの方が速い傾向があるということと、あなたが軽くなれば速くなるという話は似て非なるものです。

「軽ければ軽いほど速い」のであれば、そもそもタイムを競う必要すらありません。また、フルマラソンのタイムが2時間2分台の選手は何とかして1キロ減量すれば2時間切れるということにもなります。しかしマラソンというスポーツがそう単純にいかないのは、私たちはそれぞれトレーニング内容を反映した適正体重があり、それより軽くなりすぎてもタイムが縮まない、あるいは逆効果になる点があるからでしょう。肥満体の人が減量すれば速くなるのは当然ですが、すでにある程度トレーニングを積んだランナーが体重だけにフォーカスして無理な減量をしても恐らく逆効果になります。

体重とはトレーニングという刺激に対し身体が適応した結果の一つに過ぎません。他にも安静時の脈拍数など、トレーニングを積めば変化が起きる身体的な指標はいくつかあります。そういったものを部分的に切り取って管理しようとするのはナンセンス、時間の無駄です。大切なのは目標に対して適切なトレーニングを行えているかどうかです。適切なトレーニングさえ積めていれば、体重は身体が勝手に調整してくれると思います。

もちろん、正しいトレーニングの中には健康的な食生活も含まれます。何をいくらでも食べてもいいわけではありません。また急な体重の増減は何か健康上に問題が起きる前兆である場合もあるので、早めに医師と相談してください。

偉そうにこんなことを書いている管理人も、今朝は体重が2キロ近く増えていて少し焦りました。「体重が増えるとマズイ」という脳への刷り込みはそう簡単に消えるものではありませんが、「マズい」と感じた後で、「いや、これで大丈夫」と思い直し、ストレスを和らげられるようになりましょう。

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